昨日の記事でご紹介したVintage posterとオーダーメイドの額装イベント
Timeless Treasures「Bespoke vintage Poster exhibition」
漫画(映画)のルックバックを例えに、今回の企画を通して本当に伝えたかったことを書きたいと思います。
まずBespoke vintage Poster exhibitionには2つの意味があります。
ひとつは昨日のブログに書いた内容。
そしてもうひとつが裏テーマというか、より伝えたかったこと。
「モノの価値、判断について」です。
ずっと考えていたことがあります。
洋服屋モノにこだわる事に、どんな意味があるのか。
気付けば提案する仕事に就き20年以上。自分も歳をとり
時代は変わり続け、流行も、モノの価値も変わっていく。
それでも自分の基準にこだわる事の意味。
日々の選択を重ねるうちに、自然と残るものがある。
そのひとつひとつが、価値観や表現に変化し、やがて身近な誰か、あるいは遠くの誰かに伝わっていく。
映画化され話題となった「ルックバック」という作品で例えてみる。
この作者は、自身が観てきた映画や漫画、聴いてきた音楽。。。
そうした様々な経験を通じて得たものを、この作品という形で表現した。
他の誰かには描けない、自身の方法で。
本作品にはタランティーノ映画の影響がみられ
OASISの「Don't Look Back in Anger」の影響もある。
ほんの少しネタバレとなるが
「振り返るな」と叫ぶ藤野の言葉。
振り返る意味のルックバック。
原作の最初に記された「Don't」、最後に記された「in anger」
それらがタイトルと繋がり「Don't Look Back in Anger」になる。
意識しなければ見過ごしてしまう静かな伏線。
けれどそれを受け取った人がどう考え、どう昇華するかで新たな解釈や価値が生まれていく。
そしてこの作品には、京アニへの追悼が込められていると言われている。
事件に対する怒りだけでなく、分断を生まないための祈りのようなものが、この作品の中にはあるのかもしれない。
歌詞の中でフレーズの前に置かれた「But」
「だが、怒りで過去を振り返るな」
この一言も作者は反映させているのかもしれない。
こうやって自分の経験を通して新たなものを生み出し
それが誰かに何かを考えさせ、影響を与える。その影響が価値といえるのかもしれない。
ルックバックを知らない方には、飲食店を思い浮かべて欲しい。
食材の選び方、調理方法だけでなく
もてなす器や、空間。
それは費用をかけたり、料理の技術だけでは表現できないものがある。
これまで何を見て、何を感じ、何を大切にしてきたか。
その全てがひとつの料理にも現れ、もてなされた人間に影響を与える。
ただ知識だけでは決して辿り着けない感覚。
オリジナルに似せたモノでは実感できない感覚。
私が考える人生の豊かさや、モノを提案し続ける仕事を選んだ理由も
この感覚に魅かれ、憧れ続けているからなのかもしれない。
誰にでも判断できる、高い、安い、流行、有名。
その基準ではなく自身で何かに触れ、何かを実感すること。
今回のBespoke vintage Poster exhibition。
決して万人受けではないこの企画。
ヴィンテージのポスターというだけでインパクトがあるが
そこに中身に合わせたフルオーダーという、一般的にはピンとこない額装。
しかもとても大きいサイズがメイン。
様々な理由で、簡単に購入を決断できるものではないし
誰もが魅かれるわけではない。
けれど迷い、考え、そして「これが欲しい」と思えたならそれはきっと
ただモノを買うという行為以上の経験となる。
大きな荷物を抱え帰路に着くワクワク感。
部屋のどこに飾るのか考える時間。
友人、家族、パートナーとポスターや額について語らう時間。
何よりも、生活の中で日々目にすること。
その時間の積み重ねが、購入した人にしか得られない豊かさになる。
若者は初めての経験となりうる大きな買い物。
大人になったあなたは、いつ以来だろうか
(これまでの基準では)必要がないであろうものに
自身の決断でこんなに心が動く買い物をしたのは。
そうして選んだモノはきっと、お金を使う大きな意味を持ち
ただ知っている、見たことがあるだけでなく「持っている」ことの違いを教えてくれる。
額装されたポスターを眺めながら、その感覚を確かめてみる。
きっとそこにはこれまでにあまり経験してこなかった、特別な余韻が残っているはず。
と、書いていますが知ると知らないでは大きく違うので(これからの判断基準となる)
購入が全てではないです。ポスターや額の好みもあるので。
真面目に書きましたが、提案する事は責任や信頼があり
そこに更に個性や、人を思う気持ちなど様々なものが存在すると考えています。
最後に。
今回の企画は簡単に行えるものではなく
流行的なデザインではなく、カルチャー色が反映された
普遍的と言えるであろうデザイン。
その中で見て欲しいと思え、なおかつ状態が良いポスターとの出会い。
そして、私たちの意図を汲み取り形にしてくれるセンスあふれる額装作家さんがご協力くださったからです。
折角の機会、お見逃しなく。
Bespoke vintage Poster exhibition「Timeless Treasures」
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